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やっさんドマイナー祭りはじめます。
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・後天的に▲♀がどうしてもやりたくて書き散らします
・見切り発車です。責任持てません
もしかしたらあて馬でクロカンくるかも


 家康の頭をよぎったのは胡蝶の夢だった。現実逃避の衒学的な感想と言っていい。
 今夢を見ているのか、それとも夢から覚めたのか。
 確かに出来ない。
 ただ、自分は相当寝ぼけているのだろうと思った。思い込むことにした。夢と現の区別がついていないのだろう。さっきまでとんでもない夢を見ていたからな。
 外の空気を吸えば、少しは目が覚めるだろう。寝直すには悪夢が嫌に尾をひきすぎている。

「満月か」
 
 家康は寝床を散らかし立ち上がった。慣れた部屋だ。半分ぼけた視界も気にせず、ふらふらと畳を突っ切る。
 煌々と望月は夜の世界を照らしている。足元も確かめず、誘われるように家康は足を踏み出した。草木も眠る丑三つ時というやつらしく、大阪城は風の気配さえしなかった。
 草を裸足で掴む感覚が心地好い。寝乱れた寝巻を踏みつけそうでたくしあげつつ、空を見上げる。
 綺麗な月だな、と家康は空を見上げて心中吐露し、それから、あれ、わしってそんなに風流な心を持ち合わせていたっけ。なんて疑心を過ぎらせる。
 自分のことなのに、だった。

(花より団子のくせに)

 なんて、くすりと笑おうにも笑えない。自分の心を覗けば月への思いが本音であることがますます確かなものになっていくからだ。
 安心するんだ、月を見ていると。そう言い訳がましく呟いて、また首を捻った。
 なぜこうも気弱になっているのか分からない。
 夜には強い。暗闇が怖いと思ったことは(幼少期はさておき)あまりない。自身が何かの光源のように例えられる男だ、周りに誰もいなかったところで心細さは微塵もない。
 だというのに家康は今、太陽に劣りこそすれ、微弱な光で地上を照らす月に安堵していた。熱は伴わないはずの光は温かく、うすら寒い感覚が遠退いていく。

(暦の上では秋だからなぁ)

 薄い寝巻のままふらふらとでてきたのがいけなかったのか。ぴゅう、と降りてきた前髪を駆け抜ける秋風の先駆けにさぶさぶ、と腕を温めようとして家康は固まった。

「―――――・・・へ?」

 腕が痩せていた。わりかし頑張って鍛えたはずの上腕は子供の頃のそれと大差ないものになっている。ぷにぷにと柔らかい。 豊臣に下ってから今日までボロ雑巾になるまでとはいかないが、結構重労働の毎日なのだ、こんなに一気に肥え太ることなどあり得ない。
 それだけじゃない、腕を掴む指も痩せ――、否々。
 手そのものが細く小さくなったような。 華奢になったという言葉が一番しっくりくる現象がおきていた。

「え?」

 何よりも足を見ようとして視線を何かに遮られた。
 少なくとも昨日寝るまではこんなものついてなかった。

「!!?」

 わしの知っている体と違う!!
 血が一瞬で凍りつき、しかも逆流し始めるような錯覚。
 今更になって身の丈も縮んだことに気づく。

「そんな、ば、馬鹿な!!?」

 なんて叫ぶ声が甲高い。
 寝巻の裾をなんどか踏みそうになりながら家康は全力疾走した。
 大阪城の一の池を目指して。

「はあ、はあ」

 気が動転して、これだけの距離に息が上がってしまっている。
 半ば祈るような心地で家康は池を覗き込み、―――ぎりぎり絶叫を押し殺した。

「ゆ、夢なのか…?」

 生憎。その答えを聞くには誰かにこの肢体を晒さなくてはならなかった。

 心当たりがないわけじゃない。と、いうより一人しか思い浮かばない。
 家康は絶望的な声で呟いた。

「刑部・・・」

 先の晩の事が思い出される、天啓とも言って憚りないアイデアが落ちてきて、夜中もなんのその、家康は忠勝の改造をおっぱじめたのだ。
 重機の音が静寂をつんざく。あの時はテンションが無駄に高くて失念していたが、 ちょうどそれは調度大谷が寝起きに使っている庵のすぐ側だった。

「騒音の腹いせ・・・なのか?」

 白魚のようになってしまった手で、これまた今日の望月のようにすべすべした額にかかった髪をかき上げる。低い声を努めてだそうと思っても、無駄だった。
  黒猫を踏ん付けた方がいささか救われる。まだ末代まで呪われた方がましってものだ。

「いやいや、刑部と決め付けるのはいけない」

 刑部との絆(んなものがあるかどうかはこの際二の次だ)をこちらから絶つような真似は絶対に!いけない。と、自室で家康は激しく首を振る。言うまでもなく混乱している。頭の中は、大混乱の渦だった。
 しかもぶんぶんと首ふる度に巨乳が揺れ動き、自分の体だというのに悩ましいことこの上ない。手は袂まで伸びたが、そこまでだ。いきなり降ってきた女体の神秘に太刀打ちできるほど家康はまだも諸々の経験を積んじゃいなかった。
 
「・・・。・・・」

 鏡があればヒビリながらも現状をしっかりと確認しただろう。胸がこうなのだ、当然顔も・・・あそこも激変しているはず。

「うっわあああああ・・・・」

 そこまで考えたら、頭に血が一気に上がってきた。畳の上をのたうちまわりたい衝動を抑えると、家康は対策を悶々と考える。
 いきなり切り札を切ろうと思って、やめた。

「忠勝に・・・いや、かえって大事になるだけか」
 
 元は一国の主が胡散臭い呪いにかかって女になった日にゃ、三河の武士は誰ひとり黙っていないだろう。手に槍を刀を構え、大谷吉継と対峙するに違いない。

(駄目だ。絶対に駄目だ)

 こんなくだら・・・なくはない理由で豊臣内の分裂を招くのは御免だ。 どう考えても非は当方にある。明日一番に刑部に詫びを入れて戻してもらうのが吉だろう。

「やっぱり夢だったということになればよいのだが・・・な」

 刑部にいやらしい目で笑われて、あれは試してみたのかとか主もまだまだ子供よのとかセクハラ口撃に遭うことは目に見えている。最悪、当分この姿のままにされることが予想され、家康はこうなればいきあたりばったりだ、開き直ってごろんと寝床に転がった。
 なに、明日にはきれいさっぱりなかったことになっているかもしれん。なんて、持ち前のポジティブを遺憾無く発揮し、一応やましいものを隠すように廊下に背を向けて意識を手放す。

 

 


「・・・・・・なっ!?」

 こうしてタイミングの悪い夜這い魔は、家康の散らかった寝床に眠る女の背を目撃することとなった。

 

つづきは週末また長時間移動中に書けると・・・いいな!
 

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