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やっさんドマイナー祭りはじめます。
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・だから▽▲♀だって書く(苦手な方は注意してください)



 
 どしり、と鈍い音がした。誰かが畳に力なく膝立ちになったらしい。家康が寝ている、すぐ脇で。とはいえ、家康もひとかどのいくさ人、ここまであからさまな異常事態に寝こけているほど図太くはない。
 ぱちりとふさふさとしたまつげに囲まれた目を開くと、驚くよりも先に横向きに寝ていたせいでがら空きの背を庇うことにつとめる。ここで背から心臓を狙われたら守りようがない。
 本能的に身を翻そうとして―――影に阻まれた。

「――――ひっ!」

 肩に何かが当たる。一瞬恐怖に頭が白んだが、それが人の頭だと理解するのに長くはかからなかった。

「誰だ!?」

 次に降ってくるのは、夜這いの危惧だ。いくら女に飢えているとはいえ武将格に、それも家康に手を出す猛者が豊臣軍にいるということに驚きだが、そんな悠長なことは言っていられない。

「離・・・――――!!」

 腕に力を込めた所で家康はあることに気がついた。

「――――みつ・・・なり?」

 丁度胸の下に回された手、月明かりに浮かぶ鎧には見覚えがありすぎる。

「三成なのか?」

 家康は信じられない声で尋ねた。

 ・・・という夢を見た。

(はずだったんだがなぁ・・・)

 そう、雀のねず鳴きを聞きながら家康が漏らす。
 あたりはまだまだ暗い。夜が明けてそう長くたっていないのだろう。

(この鎧、―――間違いない)

 三成だ、と振り向きもせずに家康は断言した。
 夢だと思っていたけれど、現実だった。胸の下に回された手も、背中の感触も。昨晩から何一つ変わっていない。
 逆に不安になるくらい夜這いをかけられた先、全く記憶がないのだが、今の状況を鑑みるに無言で抱きついてくる三成をそのまま放っておいたのだろう。
 寝まきの家康は、そのままの体勢で夜を明かしていた。

「・・・。・・・」

 やや頓珍漢かもしれないが、現実逃避がてら家康はよく鎧を着けたまま寝ていられるなと感心してしまった。
 ちょっとでも身を動かせば、三成は起きるだろう。眼球をきょろきょろとさせながら、家康は自分たちの状況を想像する。気恥ずかしさがこみ上げてて、思わず目を閉じた。
 普段はこちらも戦装束で身を固めているため、家康と三成の体格はほぼ互角に等しい。
なんてことはない。家康が女だてらにたくましすぎて、三成がもやしなだけだ。手足首レベルのパーツパーツの細さでは三成が勝るとも劣らない。
 女心としては気に病むべき点なのだろうが、むしろ家康は三成の身体を心配した。余計な世話もいいところだった。

「・・・。・・・」

 しかし。
 今は違う。

 寝巻きに身を包んだ家康の身体が作り出すのは女性特有の曲線美であり、対照的に相変わらず鎧に身を包んだ三成の身体はその性を浮き彫りにさせている。ちらと視界の端に覗く四本の足を見て、家康の心臓は小さく跳ねた。
 特段、女であることに悩んだことはない。
 劣ると思ったことも、逆に勝ると思ったこともない。
 立っている場所に変わりはない。そこは戦場だから。
 家康は男だの女だのについて全く気にしていなかったと言っても過言ではなかった。
 幸い、豊臣軍での家康の扱いは粗野とも丁寧ともつかぬ、いたって平凡なものであり、露出の高い恰好で現れても破廉恥の一言もない。まわりのそっけない反応にまあ、ここは秀吉公がいるからなぁ、とこれまたそっけない感想で片づけたのはそう遠くない昔の話だ。
 今己の背を独占する三成だって、そう。口やかましく何か言ってくるかと思っていたが、家康の豪快な胸チラ、腹モロ、パンチラにも涼しい顔だった。
だから今日まで家康は警戒心すら抱かずに野郎共と一つ屋根の下で寝食ともにしてきたのだ。
 それが崩れた。

「何があったのかは、―――・・・教えてくれないのだろうな」

 甘え下手というか、そもそも誰かに甘えるという行動選択肢を三成は持ち合わせていない。自分を縋ってくれたことがこそばゆい半面、家康は意味深長な溜息を洩らした。
 あり得ない話をすると、今この習慣を持ってこの世から戦がなくなれば、家康の身体は一回り縮む。
 体格はともかく、家康の骨格は紛れもない女のそれだ。力を使う必要がなくなれば、物理的に力がなくなるのは当然の理。男の三成とタメ張れる体格を維持するのに、家康は少なからずの努力をしてきたつもりだった。
 それでも、男女の垣根は易々と越えられるものではない。子を産む力を持っている分、女の身体は追いつめにくい構造になっている。鍛えても鍛えてもなかなか目に見える結果にならないのはこのためだった。

(加えてわし、どうやら安産型みたいだしな)

 ちょっと油断すればすぐぷにぷにしてくる腕を眺める。腕だけじゃない、足も、腹も、もちろん胸も。鍛え上げた所で女の柔らかさを殺しきることなど到底不可能だった。
 薄い寝巻き越しに、三成が顔をうずめるこの身体は、きっと、豊臣にいる誰よりも柔らかいのだろう。抱きしめれば逆に潰してしまいそうな小さく、細く脆い女の身体ではない。確かにそこにあって、身を潰してきそうな重みを包みこんでくれる。
 儚さや細さもそれはそれで女体の神秘だろうが、少なくとも家康はそういう美少女めいた要素を持ち合わせていない。
 こういうシチューションには、もってこいなんだろうなとどこか他人事めいた感想を漏らしつつ、

「そうだよ、三成。・・・わしなら、正面切ってお前を受け止めることができるはずだ」

 そう、家康は寂しそうにつぶやいた。
 三成の方を向いて、その言葉通り抱きしめてやれば、せっかく寝ている三成を起こしてしまう。
 一人では立ち向かいきれない苦しみを受け止めたい気持も、せめて夢のうちだけは安らかにいてほしいと願う気持ちも。どちらも家康の中では二律背反した真実だった。

「はぁ、」

 ため息は重い。
 

 ジレンマに苛まれつつ、家康は狸寝入りに努めた。

 

 

・元親一周目もそうだけど、家康は相手に気を遣いすぎて逆に話をややこしくしてるんじゃないかなーとか思ったり思わなかったり。
・▽はマダオ関連で落ち込んでたくらいです。突発的に超鬱期が来た。家康が寝てる(フリしてる)のみて、あと何事もなく接してくるのを見て夢のことだと思ってくれたと勝手に息をつく残念具合。

・あとにょた康に夢見すぎててすみません、ちょっと三成、そこかわれ。
 

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