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・続いてません。
・どちらかというと「みんなお年頃」のちょっと前くらいを意識。妄想傘下時代
生きて帰っただけでも十分だろう。大阪への帰路の途中、三成と合流した家康の姿は悲惨の一言に尽きた。
もともと半兵衛の描いた展開の上でも家康は強行軍を強いられていた。率いる軍は慣れ親しんだ三河兵ではなく、訓練もままならない豊臣の烏合の衆共ときている。
とどめとばかりに、敵に見つかって山中逃げ回っていた家康の顔には隠しきれない疲労があった。
ここまで不利な状況で死者も脱落者も出していないのは家康の手腕といって不足はないだろう。誇るべき能力であることに間違いはないのだが、三成は苛立たしかった。
「・・・家康」
「・・・。・・・」
家康の小さな頭は馬に揺られて小刻みに揺れている。その度に鼻先を家康の髪がかすめるのが不快でたまらず、三成は忌々しい声を挙げた。
無謀の一言に尽きる任務を何とか全うした家康が出した損失は、―――馬一頭。忠勝の代わりに己が乗っていた葦毛の雌馬は、急な山道で足を挫いた。今は軍のしんがりでゆっくりゆっくり後足を庇いながらついていている。
家康は言わずもがな、三成だってまだまだ大人の体格を手に入れているわけではない。二人合わせて大の大人を少し上回るような体重しかないのだ。当然というような調子で、三成が乗ってきた勇ましい青鹿毛に二人乗りしている。
「家康!」
「・・・。・・・」
家康の成長期は来る気配がない。三成の胸の内に矮躯をすっぽりと収めきっている。
ぴたりとくっついた距離を思えば、やかましいとさえ感じてしまう明るさがなりをひそめていることは有難いはずだ。しかし、大人しくしている家康に、というより大人しすぎる家康に三成はキレ気味だった。
「・・・」
家康は、寝ていた。
三成の身にまとう鋼の鎧に頬をすりよせて、すやすやと眠っている。丸みを帯びた頬は子供特有の弾力を保ったままで、不本意ながら三成は子を持つ親の感覚を知ることとなった。
三成の馬は隊の先頭をいくから、家康の無防備な姿は誰にも分からない。知っているのは、腕の重さに異常を感じ取った三成だけだった。
「起きろ、家康」
そう、何度不穏な声を挙げると家康はぱちりと目を覚ます。
「・・・わし、寝てたのか?」
「ああ」
「すまねぇ」
なんて謝罪の言葉を口にしても、あっという間に睡魔に負けるのだ。腹立たしいことこの上なかった。
三成は理解し得ないだろうが、馬のリズムも肌に触れる鋼鉄の硬さも、家康にとっては大変心地よいものだった。
戦場を果敢に突き進み、敵の懐に踊りこむ青鹿毛の歩調は緩い。丁度母がこの背を叩くような単調な刺激を疲れた家康に与え続ける。加えて、身体を預ける鋼の硬さは、誰でもない、戦国最強の身体そのものだ。寝ぼけた家康が勘違いしたかは本人のみぞ知るところだろうが、その緊張の糸がたわむには十分すぎる理由だった。
「いっそ蹴落としてくれる」
三成が家康の耳元で呻いた。位置関係は不可抗力だ。
口きく元気もないのか、家康はぶんぶんと頭を振る。一瞬だけ背に力を入れて三成から離れるのだが、馬に揺られるうちにまた、舟をこぐ。
最終的に身体を支えられなくなって、猫のように隙間なく身体を押しつけてくるのだ。
「―――っ・・・・」
ぐわ、と怒りの炎が三成を包んだが、あっという間に鎮まった。
「・・・家康」
この後、大阪につけば秀吉様への謁見が待っている。そこで居眠りをかまされるくらいなら、この場で寝かせるだけ寝かせておいた方がよいと、頭の冷静な部分が判断を下したのだ。
それに。
「・・・」
今回、家康に与えられた任は、完全な捨て駒の扱いだった。家康自身、気づいていたことだろう。自棄になっている兵を連れて、戦況を悪化させることなく、ぎりぎりとはいえすべてをこなして帰還したのだ。奇跡と言ってもよい。
疲れていて、当然だ。
「今だけ、だからな」
少しくらい寝かせてやろう。
こういう感情を何というかも知らない三成は、また重くなった腕に力を込めた。
◆
「やれ・・・」
大阪から迎えにやってきた大谷が本当に面倒くさそうな声を漏らした。
「三成?」
道中の寒さが災いしたのだろう。基礎体温の高い家康で暖をとっていた三成にも眠気が伝染ってしまった。
「・・・。・・・」
返事がないということは本当に寝落ちたのだろう。
「・・・我の神輿は子守の道具ではないのだがな」
赤子のような顔して眠る連中に占拠されて狭くなった神輿の上で、大谷は本当に面倒くさそうに呟いた。
・単に最期のシチュエーションがやりたかっただけ
・バスや馬みたいに小刻みな振動もいいけど、マダオの神輿は快適すぎて爆睡できると思う。狭いから二人とも丸くなって寝る。大谷さんの膝枕妄想したら街中で危ない人になってしまった(28282828)。三成だけじゃなくて家康もやったげてくれたらはげ萌える。進んでは面倒見ない伯父さんポジションですね、分かります。
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