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思わず書いた。いろんな方向にごめんなさい。年明け早々寒波の影響を受けていましたCPはまだ回復の兆しを見せず番狂わせの荒れ模様、モブのち三成×竹千代です(でも名称は家康呼び)。
やっさんが誘拐しやすい理由がなんとなくわかったの巻
ぱちぱちと燃える紙は皆ぐしゃぐしゃに丸められている。
三成はそれにありったけの軽蔑を込めた視線を浴びせていた。
「三成?お前何してんだ?」
冬の空は寒い。風が強いのか、薄い雲が早く流れていた。
暖をとるには焚火の規模は小さい。三成の足を温めることすらかなわない。どうも奇妙な光景だった。何より燃やされているものが紙だった事に気がついて、家康は口をへの字にした。
「もったいないな」
何かの書きつけのようだが、見るからに余白がある。再利用の価値は十分あるのに、とドケチの鏡のような事を口走れば「貴様には関係ない」と一蹴された。
何か言い返そうと思った所に後ろから声がかかる。
「三成、ついでにこれも焼いてくれぬか」
「刑部!」
最近ますます身体の調子が悪くなっている大谷を案ずるように三成が近づく。その雲泥の差の扱いには慣れっこな家康だったが、やはり寂しさが募った。
大谷は手のひらにそれを乗せて三成に突き出した。
「ぬしに渡してくれと頼まれたが・・・見るまでもないだろう」
「ええい!どいつもこいつもそこまで殺されたいのか!!」
にや、と笑う大谷のよこで三成が目くじらを立てながら小さく折りたたまれた手紙を開く。もう確認することさえ嫌なのか、一度も開かれなかった手紙はそのまま灰に変わった。
「うわ、何すんだお前!!」
豊臣秀吉、竹中半兵衛の信頼もあつい三成には秘密裏に処理してほしい仕事も舞い込んでくる。もしかしたら極秘文章なのかもしれないのに、それをあっさり火の中に投げ込んだ三成を見て家康が慌てた。
三成にぎろと睨まれる。正しい事を言った筈なのに、家康は何が何だか分からなかった。
「安心しろ、徳川よ。こいつはな、全て三成への付文よ」
「つけ?文?」
投げかけられた聞き慣れない言葉にきょとん、と家康が呆ける。丸い目がますます丸くなるのを見て、大谷は笑みを深くした。目の前の子どもに一つ知恵をつけてやろう、そんな風に顔に書いてあった。
まだ手元に一つ残っていたそれを家康に広げて示す。三成ががばと奪うまで、家康の視界を男らしい力強い文字が駆け抜けていった。
しかし内容がいけない。
「え、ええ?うえええ!?なんじゃこりゃあ!!」
思わず声を張れば、
「でかい声を挙げるな家康ゥ!!」
・・・三成に言われたら仕舞だろう。
信じられないとばかりに真っ青な顔で家康が二人を見れば、大谷は上機嫌、三成は不機嫌そうに顔を赤らめる。
小姓のいでたちは侍のそれよりも袂の長い着物を着る。すれ違いざまにこっそりと恋心を綴った文を入れるのは、風流と言えば風流なのだろう。が、一夜を求める内容はどこまでも過激だ。
「な、な、な・・・」
衆道を知らないわけじゃない。とはいえ、それは家康の中で全く現実感を伴っていなかったため、見せつけられた手紙は衝撃だった。自分では確認できないだろうが、この中で家康が一番赤い顔をしていた。
「どこの誰だか知らんが次に私に近づいたものは斬滅してやる」
そう、凶暴な言葉を吐き捨てる三成。家康はその端正な横顔を見つめ、うん、まあ確かになぁとどこか納得してしまう。
色恋沙汰や女子の目鼻立ちに疎い自分でさえ、三成は奇麗だと思うのだから。女に飢えた男どもがその細い腰や白い肌を放っておくはずがない。
「・・・。・・・」
ただ、幼子の思考はそこで途切れた。否、強制的に切られた。
それで嬉しくもない手紙を押しつけられるのは何だか哀れだ。くらいは思ったかもしれない。しかし、その奥で嵐の如く荒む感情は三河の大地が育んだ耐え忍ぶ気性によって完全に抑えつけられていたのだ。
◆
三成が大量の付文を貰っていたという事実が過去のものへと変わる、そんな時頃のことだった。
「ん?」
もう、大きくなった三成と家康は相部屋を卒業している。ひょろと縦だけ伸びた三成に比べ、待てど暮らせど成長期が来ない家康にしてみれば広すぎる部屋に一人戻った時、己の右の袖が不思議な音を立てたのだ。
「何だこれ・・・?」
薄桃色の畳紙だ。小さく、丁寧に折りたたまれている。
瞬間、家康の記憶が呼び起こされ、弾かれたようにそれを落とした。
「え・・・?これ・・・」
いやいや、まさか。三成なら分かる。あいつは細いし、女っぽく見えないこともない。ワシみたい丸顔の狸にお呼びがかかるわけがないとぶんぶん頭を振りまくる。やりすぎてちょっと首が痛くなった。
忠勝、と思いかけてやめた。たかが手紙一つで大騒ぎしていたら呆れられてしまう。
「・・・」
もしかしたら何か重要な伝令かもしれないと思いなおし、家康は手紙を拾った。腫れ物にでも触るような手つきだった。
かさ、と小さな音がする。既に日は暮れきっていて、手元の明かりに照らしてみれば、見慣れない癖のある字が飛び込んできた。
「・・・。・・・。・・・」
すぐに放り出そうと思っていた。三成じゃないが燃やしてしまった方がいいんじゃないかとさえ家康は考えた。
しかし、小さな胸はちりりと痛む。
寂しい、その感情への共感が家康の胸を揺さぶった。
手紙の内容はこうだ。自分はさる国で商いをしていたが、武士として身分を立てられ妻子を置いてきた。年を重ねるにつれ記憶もおぼろになっていく己の子どもと家康が重なって仕方がない。小さくとも三河の長である家康に頼むのは失礼だ重々承知している。どうか、話の相手にだけでもなってくれないか。
「・・・三成に送られてきたのとは、ずいぶん違うな」
付文として綴る思いにも様々なものがあるのだろう、と家康は小さく頷いた。それから思案するように揺れる火を見つめる。
三成は付文を燃やした。
何十人という男の求めを拒んだ。
「ワシは・・・」
次の言葉が出ない。複雑に絡み合った感情は、家康の細い喉を通れるようなものじゃなかった。
燃える手紙を見た時、ワシは何を思った?
(――――――うらやましい)
瞬間、感情の美醜を理解する。何と醜い羨望だろうと、家康は自分で自分を殴りたかった。
三成が聞いたら激怒するだろう。三百回殺されても文句は言えない。だったら貴様が夜伽を務めろと猿の親戚の閨に放り込まれそうだ。
違う、そこじゃないと家康は首を振る。一夜を越すことが重要なのではない。誰かに求められることが家康にとって肝心なのだ。丁度、この手紙の主のように。誰かに必要とされている感覚が、家康の心を満たしてくれそうな気がした。
豊臣に下ってから家康は飢えていた。幼少期に放っておかれることが多かった分、孤独に強い。その半面、どこかが常に乾ききっている。ふとした瞬間こみ上げてくる寂しさに狂いそうになる。そして満たされたいという感情が鎌首をもたげる度、それをいきすぎた欲と罵り、押さえてきたのだ。
それが今、爆ぜてしまったのだ。
最近、三成と部屋が分かれたことも大きかったと言える。
「・・・よし、」
三河もいえた口じゃないが豊臣は人が多い。綴られた名前からでは顔も想像つかなかったが、家康は誘いに乗ることを決心した。
大丈夫、ちょっとさみしい男のため、子の代わりになるだけだと言い訳がましく呟いて。
良い子は真似しちゃだめですよ!変なおじさんについてっちゃらめぇぇですよ!
またふおおおしたら続き書きます。
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