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嘆くーよりもー人をー信じてー傷つくー方がいいー
・・・みたいな子だよね竹千代はという話
どうもおかしいと思うようになったのは、三度目の訪問からだった。
息子と思しき名前を何度も咽びながら、痩せた胸の中で家康も少しばかり泣いてしまったのが一回目。
二度目は慈しむように頭を撫でまわされた。それがこそばゆくて、家康は目端を潤ませた。
「葉蔵・・・」
そして三度目の逢瀬。
――――おかしい。
男の遠慮ない視線を逃れるように、畳に視線を落として家康は内心吐露した。
(始め聞いた名前とも、二度目聞いた名前とも違う・・・)
家康の頬を何度もなぞる手の動きはどこか手慣れ過ぎている。長く子と引き離されている男がどうして、日に日に成長する子どもとの接し方についていけているのか。
子への想いは本物だろう。しかし、男の話す息子の姿はどうも要領を得なかった。
(もしかして、既に)
息子はこの世のものではないのかもしれない。なんて、家康は勝手に男の愛息子を殺す。このご時世ならあり得る話だ。昨日生まれた赤子が今日死ぬ。厭世ぶるつもりはないが、荒れ狂う世の前にすると人の命はあまりにも儚い。
息子を亡くしたことが信じられなくて、男の中で生き続けてしまっているのかもしれない。だから時に活発な子になり、人みしりになり、病弱な子になるのかもしれない。
(だとしたら・・・どうしたものか)
少しでも男の支えになれればと思う。ただ、過去に向かって生きては欲しくない。
家康が黙りこくっていると思案に暮れる姿は気にくわなかったのか、「竹千代様、笑ってくだされ」と懇願された。
「あ、ああ。すまねぇ」
そういうことに関しては得意だ。へら、と無理矢理目じりを下げれば、男はほうと吐息を漏らす。なんだか恍惚とした顔だった。
三成とは正反対だと、家康は思う。つい癖で表情を作ってしまうと三成は烈火のごとく怒る。二度三度じゃ済まず、家康はそれでだいぶ痛い思いをした。
三成のように直情に振舞うことはできない。今もまた、目の前の男の見えない過去にまで想いを馳せてしまっている。
だから「竹千代様、お願いにござります。口に紅を塗らせてくれませぬか」と言われた時には寝耳に水過ぎて変な声が出た。
「へ?」
家康と向かい合うように座っていた男がすっくと立ち上がる。元商人だけあってどうも腰が落ち着かない。いそいそと取りだしてきたのは、家康には全く縁のない化粧道具だった。
「某が昔商いで扱っていた物にございます」そう、男が媚びた調子で笑う。口元は三日月形に歪んだ。
家康は慌てて手を平にした。
「い、いやいやいや。ワシにそんなもの塗ってもなんにもならねぇぞ」
「息子はもう少し血の色が映える顔をしておりまして・・・」
「・・・。・・・そうなのか?」
この茶番にどこまで付き合えばいいのやら。ここでかたくなに拒み、座を蹴った後この男は生きていけるのか。家康の馬鹿に真面目な部分が、男の言葉を疑う本心に蓋をする。
何、誰に見られるわけでもないかと渋々承諾した。紅の一つや二つ、減るもんじゃないし。一体何が犠牲になると言うのだ。
「・・・」
男の冷たい手が家康の唇に触れる。粘度のある赤が丹念に家康の小さな口を彩る。男の何とも楽しそうな顔に、よかったのかこれでと家康は気まずそうに眼をあちこちに動かした。
それが気に障ったらしい。ぴしゃりと「動かないで下され」そう、言われてしまった。
「すまねぇ」
「目を閉じておられるとよろしいかと」
「分かった」
なんて、あっさり家康は男の提案を飲む。瞬間、顎を軟く触れられ、びくと家康は大きく肩を震わせた。
何か当たっている。
違う。指じゃない。温かい。濡れている。
「―――――!!むぐぅ!!」
いきなりの事に家康は混乱した。押し倒されたせいで視界はあっという間に天上に移り変わり、慌てて男を捉えようとすればもう下をおろしている。誰でもない己に欲情している男を見て、家康の頭から言葉が消えた。
「やっ・・・」
太もものあたりにあつい肉棒が当たっている。男の荒い吐息が胸にかかる。健気に爪を立てているのすら感じるのか、狂ったように家康の胸を舐めまわした。服を脱がす手間さえおしいのか、顎と舌を上手く使って襟を割る。
「い、あ・・・んんんっ!!」
男としての矜持が悲鳴を阻む。いや今こそ忠勝の呼び時だったろうが、家康の脳裏によぎったのは別の人物だった。
「 !!!!」
家康が叫ぶ。
忠勝よりも早く、三成はそこに馳せ参じた。
◆
今頃、男は淀川に浮かんでいるのだろうか。ぼんやりと光る部屋の明かりを眺めながら家康はそんなことを考えていた。
もともと稚児遊びの行きすぎた男だったらしい。陰間通いが見つかって謹慎を喰らわされていたのだという。多くの人間が行き来する大阪の城の中でも男の欲を満たすような存在は稀有だった。だから家康に付文をよこし、無知な家康がそれに乗った。それだけのことだった。
「・・・。・・・」
三成は。珍しく怒号を押さえていた。というよりも、思いつめた顔で茫然自失した家康の横顔を眺めている。三成は思ったことはすぐに口に出す男だ。逆に言えば、今自身の胸の内にある感情を上手く言い当てることが出来ずに、不快感だけを持て余していた。
長い沈黙が二人の間を流れていく。
身を清め、布団に放り込まれても眠れるような時間じゃない。家康は身を起こし、黙りこくっていた。
「何か言え」
自分が喋ることがないからって三成は無茶な事を言う。
「何かって・・・」
「泣け」
短く命じられた。
三成なりのいたわりからなのだろうが、
「泣けっていったって・・・」
と家康は部屋の隅に視線を逃す。三河側にこの話を伏せてくれている。普段の三成からは考えられないような行動だったが、家康にそれをありがたがる余裕はない。
胸の内はまだ荒れ狂っている。ぐずぐずと身体はくすぶっている。悲しみでも恐怖でもない。三成同様、家康も己を掴みきれなくて、困り果てていた。
情けない声で家康が告白する。
「・・・泣けねぇんだ」
「何」
三成の声にいら立ちが混ざる。家康の返事が酷く乾いていたことには気づいていないようだ。何をやせ我慢している、大声で怖かったと泣けばいいものをとその視線が語っている。
家康は困りきった声で、
「本当なんだ。信じてくれ。確かに酷い目にはあった。気持ち悪かったとさえ・・・。・・・」
はた、と家康が口に手を当てる。男に触れられ、口吸いまでされた小さな唇の感触を自分で確かめる。
それから弾かれたように三成を見た。
初めて冬の空に降りる雪を見たような純粋そのものの眼差しで。
(――――――・・・そうか)
長い自問自答の末、家康は結論を見つけた。
死ぬほど恥ずかしい真実だったが、頭は酷く冴えている。この仮説は、正しいだろう。
「・・・・」
あとはキレかかっている三成に、どう穏便に伝えるかだった。
イメージは世界の北野の方な座頭市。確か男の子がお稚児遊びで化粧させられてて、その妖しい色気に思わず食い入るように見てしまった覚えがある。変態ですいません。両親に顔向けできない。あと三河武士の皆さまにも・・・顔向けできなorz今までモブ康やってるくせにね・・・モブ千代にすごい良心の呵責が・・・胸が痛い
あと一回くらい続きます。ここから無理矢理▽▲に持ってくキリッ!
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