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あ。うんそう、ストーカーだね。な▽といろいろフィルターがかかっちゃってる▲
だめだこいつらはやくry
息が詰まる。
胸の、いや、身体の上に何かがのしかかっている。獣のような息使いに肌が粟立つ。それだけじゃなく、寒い。普段は日の下にさえ晒さない体の部位に、直に秋風が吹き込んでいるようだった。
『ひっ』
関節の曲がり具合から、自分が今どんな体勢を取らされているのか分かる。あられのない、という表現がしっくりくる体勢に、心の臓を掴まれたような感覚が家康を襲う。
身体が恐怖につかりきっている。反撃はもちろん、声を荒げる余裕すらない。歯の根すら、合わない。凍えるように、全身が震えている。
『嫌だ・・・』
どうしてこんな声しか出せないんだ。許しを乞い願うような、情けない。男の耳には逆に煽っているようにしか聞こえないじゃないか。
なんて、焦りだけがから回って家康の身体をますます強張らせる。
涙で滲んだ視界を何とかしたかったが、両手の自由など、とうの昔に奪われていた。
『痛っ』
今まで体験したことないような激痛が走る。身をよじっても、普段だったらいともたやすく逃れられる男の手が鉄鎖のようにかたかった。
何かが、いや、何かなんて分かりきっている。睦言一つないという事実が、目の前に突き付けられた行為が何たるかを如実に語っている。
否、愛があればいいというわけでは――――。
否々、愛があればそもそもこんな真似しない。
信じたくない、信じられないとばかりに家康は地に視線を落として頑なに目を閉じる。これ以上、心をズタズタにされるのは御免だった。
強張りきった家康の身体が分からないはずない。拒絶、それしか表していない家康の態度が分からない程、盲いてはいないはずだ。
『・・・』
それでも行為は止まらない。
痛ましい金切り声があたりに響いた。
『嫌だ、痛い、止めて、許して!――――三成ぃ!!!!』
◆
止まっていた呼吸が蘇る。からからに乾いた喉の奥に冷たい秋の空気が入ってくる。
ぐっしょりと嫌な汗に濡れた身体は、鳥肌が立つほど冷え切っていた。
呼吸は荒い。鎮めようと努めても、まぶたに焼き付いた残像が離れない。身の安全を確かめるように布団をめくれば、もうそれは自分の慣れ親しんだ身体じゃなくなっていた。
「・・・今夜も、か」
甲高くなった声を出したくなくて、家康は僅かに呻いた。
恐怖がどうにかなってしまって、己の中で暴れていたけれども夢は夢だ。当たり散らす相手もなく、強いて言えば家康はこんな事態を招いた己自身を恨んだ。苦し紛れに、歯ぎしりをして畳の縁を睨む。
「三成は、・・・そんなんじゃねぇ」
はっきりと断言した。己と、遥か西の地でほくそえんでいるであろう大谷吉継に。
こんな夢を毎夜毎夜見せた後、実際に女の身体として目覚めさせる大谷の性根など、大体想像がついた。ひひひ、せいぜい正夢にならぬことを祈れ。なんて台詞が大谷の声で家康の中で再生される。
よもやまさか大谷自身、こんな短期間に家康が秘密を三成に看破されるとは考えてもいないだろう。家康は大谷の帰還を指折り数えて待っていたが、何も知らない性悪は待てど暮らせど帰ってこない。恨みはとことん晴らさないと気が済まないのか、書を送ってもなしの礫だ。
「大体、わしが三成に・・・」
言いかけて自爆した。既に凄いことになっている頭をかきまわして、自分のとんでもない想像を振り払う。悪夢の先の先まで見えてしまい、思わず叫びそうになった。
白無垢くらいならまだ冗談で済まされるが、腹帯をしかと巻いてやや子に備えている己の姿にはさすがにおぞけがする。
「ないないない、絶対ない」
現に家康は何度か三成に対して思いつく限りの色仕掛けを試しているが、返ってくるのはマジギレの怒号だけだ。家康は牙をむかれながら、どこか安堵した笑みを浮かべていた。
「そりゃそうだよな、いくら女の姿をしていても、中身はわしだ」
あいつがそこまで女に苦労しているとも思えん。そう、自分に言い聞かせるように家康はうんうん、と大げさに頷いた。
◆
家康の耳が何かを捉える。
「・・・来たな」
慌てて横になり、廊下を背にして狸寝入りを始める。呼吸を殺し、それこそ死んだように微動だにしない。
廊下が微かに軋む。草木も眠る時間だからこそ家康にもその音が聞こえたが、平生だったら背後に近付かれるまで気づきもしないだろう。
「・・・。・・・」
家康の部屋の障子が微かに開けられる。先ほどよりもぐんと冷えた空気が汗の引かない家康のうなじを撫でていった。
三成の死線を背後に感じつつ、家康は息を殺す。一体三成が何をやっているのかなんてとっくのとうにお見通しだ。口角が自然と上がってきてしまう。我慢するのも何だか馬鹿らしくなった。
目的を済ませてさっさと退散しようとしていた三成に、家康は声をかけた。
「三成」
驚いた声は流石に上げない。三成はそれこそ幽霊にでもあったような顔をして目を見開いたが、寝乱れた姿勢も構わず流し眼に己を捉えてくる家康の姿を見て、不快極まりない声を挙げた。
「貴様・・・起きていたのか」
「どうも夢見が悪くてな」
よっとと身を起こそうとすると、三成の剣呑な雰囲気に拍車がかかる。どうやらはだけまくった寝巻きから何か見えたようだった。
視線を逃すまいと家康はまっすぐに三成を見つめる。それから、
「三成、ありがとうな」
と感謝を口にした。
「あれから毎晩、見回りに来てくれてるだろ?」
その言葉に、三成は眉をひそめた。
・・・勘違いは罪
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